【余談】 【読書】 西村賢太 『苦役列車』

【余談】 【読書】 西村賢太 『苦役列車』

  かかえているだけで厄介極まりない、自身の並外れた劣等感より
  生じ来たるところの、浅ましい妬みやそねみに絶えず自我を侵蝕されながら、
  この先の道行きを終点まで走ってゆくことを思えば、
  貫多はこの世がひどく味気なくって息苦しい、
  一個の苦役の従事にも等しく感じられてならなかった。(p.116)

――『苦役列車』 とは、いったい何のことを指すのかを念頭に置きつつ、
本書を読み進めていくと、なるほど、合点がいった。

中卒の男が人足になり、その生き様を開けっぴろげに語っている。
「食う為の日当五千五百円のみが眼目」 (p.44) の人足の生態は
もはや救い難いようがなく、ここからどう抜け出すのか、見当もつかない。

が、ただ一点、同級生の唯一の友人・日下部の登場によって、
貫多は 「三十キロ程もある板状の固まりを延々木製のパレットに移すだけの」
肉体労働を繰り返すだけの単調作業から、これらのパレットを
プラッターやフォークリフトを操作する作業の側へとステップアップし、
真人間に変わるのではないか、という兆しを感じさせる部分があった。

それにもかかわらず、「自身の並外れた劣等感より生じ来たるところの、
浅ましい妬みやそねみ」 の激しい発動により、日下部との仲も台無しにし、
結果、ステップアップどころか、またしても元の人足に逆戻りという
展開になってしまうのだから、もう、目も当てられない。

こんな暗澹たる私小説を読む意味などあるのだろうか。

すぐに思い浮かべたのは、
「生きてゆく為の労働なぞ案外容易いものだな」 と、
嘗めきったような若い衆に絶賛おすすめしたいな、と。

   貫多はこの日以降、毎日のことではないが、
  一、二日おきにかの労務に出かけるようになり、
  その都度、昭和島や平和島、芝浦、豊海、或いは船橋や鶴見なぞの現場に派遣され、
  似たかよったかの積み替え作業で五千五百円也を得ることになった。
  その日に稼いだ金は、次にその会社にゆく為の電車賃だけ残して
  アッと云う間に使い果たし、また同じ額を得るべく、
  どうでもそこへ行かざるを得ない状況に自らを追い込むかたちとなった。
   つまり、日雇い特有のあの悪循環な陥穽に、
  手もなくすっぽり嵌まり込む格好となってしまったのである。
   土台貫多のように、根が意志薄弱にできてて目先の慾にくらみやすい上、
  そのときどきの環境にも滅法流され易い性質の男には、
  かような日雇い仕事は関わってはいけない職種だったのだ。
(pp.15-16)

――本書を読了した後、「いろいろな意味でルーズ極まりない日雇いシステムの味」
を試してみたいという気持ちなど、到底、湧きようがなくなるから。

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